世界ではじめて自動糸調子機能を
搭載して25年
進化を続ける
ベビーロック 開発秘話

「もっと楽に」「もっと楽しく」「もっとすごいものを作りたい」
洋裁愛好家の気持ちに“Made in Japan” の高い技術力で寄り添うベビーロックのロックミシンは、国内シェアNo.1。人気の理由の1つでもある「自動糸調子機能(ジャストフィットシステム)」が家庭用小型ロックミシンに世界ではじめて搭載されて今年で25年!
ベビーロックの誕生から進化について、ベビーロックの製造元、山形の鈴木製作所で取材してきました。
<レディブティック2022年10月号(ブティック社)掲載記事・加筆>

「自動糸調子機能(ジャストフィットシステム)」は経験やコツが必要な糸調子を自動で合わせてくれる嬉しい機能。薄地から厚地まで、生地を変えても調整なしでキレイに仕上がる。

〝思いやり〟が生んだ
家庭用小型ロックミシン

1956年、木製の試作機から始まった家庭用小型ロックミシンの開発。きっかけはベビーロックの開発者、佐久間孝一氏の思いやりだった。ミシンの修理に訪れたテーラーで長年生地端を手でかがっている見習い職人を見て「この人はいつになったら服の仕立て方を教えてもらえるのだろう?」「もっと楽に縁かがりをする方法はないだろうか?」と思慮したことにはじまる。それから10余年、試行錯誤の開発を経て、1968年ついに世界初の家庭用小型2本糸ロックミシン「ベビーロック」が発売され、全国のテーラーに普及していった。
その後、1981年には3本糸に進化して巻きロックを搭載、1990年には差動送り機能を搭載した4本糸に進化、これにより縁かがりミシンとしてだけでなく、ニット素材の縫い合わせのためのミシンとして、さらに幅広い用途に活用されるように。

ベビーロックの開発者、佐久間孝一氏の手による、家庭用小型ロックミシンの最初の木製の試作機。

1968年、世界初の家庭用小型ロックミシンとして発売したEF-205型(写真左)。“ まるで赤ん坊のように小さなロックミシン” という意味から「ベビーロック」と名付けられた。最新機種Sakura BLS-5型(写真右)と比べると、まさに「ベビー」

使い手の声を形に〝あったらいいな〟を創る

ロックミシンユーザーの多くが不満に思っていたルーパー糸通しの煩わしさ。これを解消するため1993年には「空気圧式ルーパー糸通し(エアスルー)」機能を開発。レバーを押すだけで、空気圧の力で瞬時にルーパー糸を通してくれるこの機能は、一度使ってしまうと他のミシンには戻れなくなる! とユーザーから大好評。この機能を搭載した「衣縫人」シリーズは大人気モデルに。

ロックミシンに革命的な進化をもたらした「エアスルー」。1996年に発明大賞を受賞。

〝孫のいたずら〟から自動糸調子機能を開発

爆発的ヒット商品となった「衣縫人」シリーズを使っていた娘さんから「調整してもらったばかりなのに糸調子が合わない。」と相談を受けた開発者の佐久間氏。そんなに頻繁に糸調子が狂うはずがないと調べたが、ミシンに不具合は見当たらない。そこで娘さんの自宅に行くと、お孫さんが糸調子ダイヤルを回して遊んでいる姿が。
「これは日本中、世界中の家庭でも同じようなことが起きているのでは。糸調子ダイヤルをなくし、自動で糸調子を合わせてくれるミシンがあれば……」と開発に着手。
幾多のトライ&エラーの末、自動的に最適な糸の送り出し量をコントロールする「自動糸調子(ジャストフィットシステム)」機能を世界ではじめて搭載したロックミシンが1 9 9 7 年に完成、「糸取物語」と名付けられた。
この技術は現行最新機種「Sakura」にも取り入れられている。

初代糸取物語のミシン内部。これが自動糸調子の要となる部品「蓄糸器(ちくしき)」。

数々の部品から工場内で製造され、熟練の職人たちの手によって、1つ1つ丁寧に組み立てられている。

1997年|自動糸調子(ジャストフィット)付ロックミシン BL23型・25型 糸取物語

最新機種「Sakura(BLS-5)」にも自動糸調子機能はもちろん搭載。現在では生産が追いつかないほどの大人気商品に。

一方で自分なりの縫い目にこだわりのある上級者の方には、自分で糸調子を調整できる「衣縫人」の人気も健在。ユーザーの声に耳を傾け、多くの機種が継続販売されているところも、ベビーロックの人気の秘密のひとつだ。

〝ものづくり〟への想いでつながり、寄り添う

ベビーロックのミシンは一台一台、熟練職人の手で組み立てられる。組み立て後、ユーザーの使い方に合わせたさまざまな種類の糸、厚みや質感の異なる生地を使って行う試縫いも重要な工程。縫い目の仕上がり具合を厳しくチェックし終わって、ようやく出荷される。ユーザーの元に届いてすぐに美しく縫えるミシンであることもまた、思いやりのひとつ。
 服作りが大好きなユーザーの声を拾い、その声に寄り添うべく常に進化に挑戦し続け、最高のロックミシンを創ることで応える─。
服の作り手であるユーザーも、ベビーロックも、鈴木製作所も……みんな「ものづくり」への熱い想いで、ひとつにつながっている。

ルーパーと針の動きが正確か、大画面に拡大して確認。誤差が限りなく0に近い精密度で組み立てられている。

多くの部品も自社工場で製造。これぞMade in Japan。

ルーパー穴には職人技の高度な技術で1つ1つ磨きをかけ、スムーズな糸通りを実現している。

試縫い後は縫い目をルーペで拡大して確認。最高品質のロックミシンに欠かせないのはやはり人の手、そして人の目。

お話を伺ったのは・・・

株式会社鈴木製作所代表取締役社長 鈴木重幸氏。
「製品を通じ、ユーザーに喜び・生きがい・夢と感動を届けたい」

開発部部長の佐久間徹氏。
ベビーロックの生みの親、佐久間孝一氏のご子息。
親子2代に渡り、高い技術力でベビーロックの進化に貢献。

ベビーロックの生まれ故郷、山形の鈴木製作所。独創的な発明を生み出す創造力とそれを形にできる技術力の高さが“ 日本品質” のロックミシンを支えている。

本文で紹介しきれなかった写真をご紹介します

応接室には初代から最新機種まで歴代のロックミシンが並ぶ棚が。ベビーロックの歴史が感じられ見ているだけで楽しい。

自動糸調子搭載ロックミシンの数々。奥の糸取物語BL65型は発売当時に販売促進のため蓄糸器が見えるようカバーを透明にした特別仕様。

1963年に作成された1本針2本糸の研究試作機。

撮影のためミシンのカバーを外して欲しいとお願いすると快く対応してくださった開発部長佐久間さん。手慣れた様子であっという間に作業完了。

小さな部品だけでなく、ミシン本体の骨組みのような大きなものまで工場内でひとつひとつ作られている。

関係者以外は入室が禁じられている開発室。厳格な雰囲気とは対照的に、社員の方が作ったというウェーブロックとSashikoで縫われた可愛らしい表札が。この中でベビーロックの革新的な機能の数々が生まれている。

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