ベビーロックのある暮らし Vol.6 あらきかずこさん テキスタイルアートデザイナー

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 水溶性の粘着シートに、毛糸やリボン、布などの素材を自由に配して、独特の不織布を創るフリーレース。
 今回の「ベビーロックがある暮らし」は、自ら開発したフリーレースの手法を使って作品を発表する傍ら、フリーレース・テキスタイルアート教室を主宰する、あらきかずこ先生をお訪ねしました。

「もっと面白い編み地ができないか?」
と試行錯誤を重ねながら生まれた手法がフリーレース。

あらき先生独自のフリーレースはどのようにして誕生したのですか?

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 私は手編みや機械編みニットの講師をした後、山本寛斎スーパースタジオでニットのテキスタイル開発をしていたんです。その時から「もっと面白い編み地ができないか?」ということに取り組んでいましたが、やはり編むだけでは限界があるんですね。
それで色々と試行錯誤を重ねた結果、毛糸を使って不織布をつくることを思いつきました。最初は毛糸だけでしたが、そのうちにリボンとかコードの素材を加え、最終的に布帛やニットと組み合わせて、今の形になりました。


フリーレースの魅力は何ですか?

 テキスタイルは素材・色・構成の三つの要素で創られるものですが、フリーレースは一人ひとりがその三要素を自由に選ぶことで、他にはないその人だけの作品を創れるということが一番の魅力だと思います。
 もうひとつは、洋服だけの世界にとどまらず、室内装飾などのさまざまな分野への拡がりがあるところでしょうか。(※実際にあらき先生はホテル内のオブジェ等、洋服以外の作品も提供している)

今日も生徒さんがお越しになられていますが、主宰される教室について教えて頂けますか?

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 14年前に開校した「さいたま本校」と、ヴォーグ学園の東京と名古屋、日本橋の小津文化教室で定期的に教室を開いています。教室といっても何か決まったものをつくるのではなく、皆が思い思いのものをつくっている感じですね。お互いに刺激を受けながら、でも内心では『自分の作品が一番いい!』と思いながらね(笑)。
 さいたま本校へは、岡山や静岡から通ってきて下さる方もいらっしゃって、10時から4時の教室の時間が過ぎても残っていろいろしているので、「帰りの新幹線の時間、大丈夫かしら・・・」と心配するくらい、本当に熱心な方たちばかりです。

ベビーロックとフリーレースのコラボレーションで作品の幅が拡がってきました。

ベビーロックはいつ頃からお使い頂いていますか?

 10年ぐらい前からですね。当初は違うメーカーのロックミシンを使っていたんですが、ベビーロックを使い始めてから、フリーレースとのコラボレーションで作品の幅がグッと拡がりましたね。ホントにベビーロックがあって良かったと・・・。別に取材だから良いことを言っている訳じゃないですよ(笑)。それぐらい使い勝手が良いですね。違うロックミシンを使っていたから分かるんです。

ありがとうございます。具体的にはベビーロックのどういう点が良いとお感じですか?

 先ず、糸通しが楽ですし、それ以上に糸調子が自動なところが便利。フリーレースでは色々な素材を使いますし、糸もウーリーやハイスパン、ラメなど色々な種類の糸を次々使うので、調整が要らないというのは本当に便利で、創ることに集中できるんです。それにウェーブロックはフリーレースの作品づくりに良く使います。装飾だけじゃなく、例えば余った布を細く切って、両サイドにウェーブロックをかけると、フリーレースに使うリボンができるんです。
 ベビーロックの社員の方が見せてくれたウェーブロックのサンプルを最初に見た時は、実はあまり良いとは思わなかったんです。でも、いろいろな作品に使ってみて、「あら、けっこう使えるじゃない」と。だからベビーロックの社員の方にも『もっと素敵なサンプルを持って歩かないとダメ!』って言ってるんですよ(笑)。

主宰する教室の生徒さんもベビーロックをお使いですか?

 皆さんお使いですね。私自身は、ベビーロックは素晴らしいと思うし、フリーレースには不可欠だと思っています。ただ、生徒さんが教室に入られた時には、絶対にロックミシンを買ったほうが良いとは言わない(笑)。道具は使う目的があって初めて意味があるもので、目的もないのに道具だけ買わないじゃないですか。ですから、生徒さんがフリーレースで色々な作品づくりに取り組む中で、「先生、やっぱりロックミシン必要ですね・・・」となって、初めてベビーロックをお勧めすることにしています。

作品をどんどん創りたい。でもそれ以上に人に教えて、伝えていきたいですね。

つくり手の自由度が高いフリーレースは、服をつくるテクニック以上に、テキスタイルや形を発想する力が必要だと思いますが、先生自身は作品のアイディアをどのように得ていらっしゃるのですか?

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 努力していることは何にもないんです(笑)。良く『新しいデザインをつくるのは大変でしょう?』と言われるんですが、実際はセーブしないとつくり過ぎて困るくらい(笑)。
 私は作品づくりのための発想はあらゆるものから得られると思っています。映画をみて感動したり、絵画を見て感動して、そこからイマジネーションを拡げればいいんです。例えば、先日開催した、生徒さん達の作品展(4月5~10日にギャラリー日比谷で開催されたテキスタイルアート展示会「IL MUSEO」)では、皆さんが実際に見て感動した絵画や写真をテーマに作品をつくってもらいました。私自身も、何かおいしいものを食べて感動した、旅行に行って感動した、そういった日々の生活の中で感動したことを作品づくりに活かしている感じですね。


今後、フリーレースでどのような活動をお考えですか?

 私自身は創ることが好きなので、とにかく作品をどんどん創っていきたい。でもそれ以上に人に教え、フリーレースを伝えていきたいんです。そして、その方々と一緒になって新しいものづくりに取り組んでいきたいですね。今は洋服が多いですが、10年経った時、今とまったく違う分野でフリーレースが使われている。一言でいうとそういう「ワクワクすること」がしたいんです。

取材の合間を縫って、生徒さん一人ひとりに合わせた型紙を作るあらき先生。その手際が見事。しかも早い。本当に何の迷いもなく”きっぱり”と線を引くのです。連続テレビドラマ「カーネーション」の中で、主人公の糸子(小篠綾子さん)が言った『手間は省いたけど、手は抜いてへん』という言葉を思い出しました。
これからも素晴らしい作品を期待しています。


profile

あらきかずこさん プロフィール
「ヴォーグ編物指導者養成」、「やまもと寛斎デザインスクール」卒業後、「やまもと寛斎スーパースタジオ」のインターナショナル部門にてニットテキスタイルデザイン、「ヴォーグ学園」テキスタイルアートを担当。「ニットスクールあらきかずこ」主宰。現在、「あらきかずこテキスタイルアートスクール」を主宰。著書に「リボンとミシンで作るフリーレース(日本ヴォーグ社) 」、「リボンで作るかんたんテキスタイル フリーレース(雄鶏社) 」等がある。

あらきかずこ先生のホームページはこちらから。 
http://www.araki-kazuko.com/index2.html

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