【部品】シンプルな設計、そして500を超える部品
ミシンは、設計→部品製造→組み立て→検品を経て完成します。
多機能な機械を作る時、人は複雑でめんどうな作り(設計)をすることは意外とできるものです。難しいのは、いかにシンプルに設計するかというところ。シンプルにつくれば故障が少なく耐久性の高いミシンにすることができます。
お客さまに喜んでいただける機能を考え、シンプルに設計し、日本の山形で1台ごと丁寧につくられる、それがベビーロックの製品です。
ミシンは500を超える多くの部品が必要な精密機械。
部品にはそれぞれ役割があり、ひとつひとつの部品が組み合わさって「機能」をつくっています。そのパーツの設計もさることながら、まだ機械だけでは完成に至らない部品もあり、職人が1つひとつ手作業で研磨するなど、熟練の技が生かされています。
土台となるフレーム
ミシンの土台となる部分。ここがしっかりしていないと全ての取り付け精度に影響が出てしまう。最初の検品段階で厳しくチェックし、問題のあるものはすべて弾く。
ルーパー研磨作業
糸が通る穴のある部品、ルーパー。1mm程度の穴を磨く作業は機械では難しく、熟練した人の手で行われる。凧糸から手に伝わる抵抗感がツルッとした感触になれば磨きおわり。
設計から部品づくり
細かく設計された部品データを取り込み、鋼材やアルミなどの素材から加工していく。
【組立】組み立ての誤差が、ミシンの縫い目に現れる
全てのミシンの組み立ての軸となるのは針。針を中心として全てのパーツの位置関係を決め、針の動作タイミングで他の機能のタイミングを決めていきます。
そしてたくさんのパーツを組み立てる作業も、熟練した技術が必要な工程です。特に針とルーパーの位置関係は、わずかな誤差でも品質に影響を与える繊細な部分。誤差を限りなくゼロに近づけるようなきめ細やかさで組み立てるのがベビーロックのこだわりであり、そうすることで、縫った時に目飛びがしない「縫い目の美しいミシン」に仕上がります。
また「精密機械」と聞くと壊れやすい印象があるかもしれませんが、しっかりと組み立てられたミシンは多少ハードに扱っても壊れません。
針を中心に組み立て始める
最初に取り付けられるのは、針。ここを中心に全てのパーツが組み立てられる。
ミシンの組み立てライン
1台のミシンを1人が部品1つから組み立てると2〜3日必要。台数のあるロックミシンでは職人の技術力にあわせて工程をいくつかに分け、約30人が流れで組み立てていく。
モニターで細部組み立て
組み立ては精度が要求される作業。拡大モニターに細部を映し出し、動作の滑らかさを確認しながら最適な位置に調整する。
【検品・納品】全てのミシンは作品です。納品前の厳しいチェック項目。
前提として家庭用のミシンは、工業用とは違い、1台でどんな生地でもどんな糸でも対応できる必要があります。ベビーロックのミシンは「出荷基準のハードルが高い」のが特徴で、そのチェック項目や方法は多岐にわたります。
漏電チェック、傷や汚れのチェック、縫う時の動作音や縫い目、スムーズさ、そして付属品や箱まで厳しく確認。丁寧な工程を経て組み立てられたミシンは、ほとんどトラブルなく検品に回されますが、時には「なんかおかしいぞ?」という熟練工の感が不具合を発見することも。
みなさまに納品されるミシンは、箱を開けたら糸がセットされ(すぐに縫うことができます。)、縫いの見本布が挟まれた状態でお手元に届きます。これはしっかりと検品を行なった証でもあるのです。
縫い目の精度を確認
検査にはルーペ項目というものも。1台ごとに縫い目が綺麗に出ているか、目視でチェック。
見本布へのこだわり
これがわたしの縫った見本。お客さまに届いた時に恥ずかしくないモノを渡したいと、作品のようにやり直すことも。
開発者インタビュー
納得できるミシンづくりの原動力となる、忘れられない笑顔
忘れられない笑顔があります。
わたしが最初に携わったミシンを使ったある方が、ニコッと笑った──、その笑顔が忘れられないのです。
ミシンをつくるのにはいろいろな苦労があって、これまですんなり開発できたものはひとつとしてない。必ず技術的な壁やうまくいかない事がある。それを乗り越えていかないと製品化できませんが、その笑顔を見た時に全ての苦労が報われたような気持ちになりました。
わたしたちが障壁を乗り越えられなかったら、きっとお客さまは不満げな顔をされていたことでしょう。
わたしたちは形としてはミシンをお届けしているのだけれど、実は心の豊かさや満足をお届けしているのですね。自分が心底納得できるものを仕上げないと、お客様の笑顔にはつながらない。
これからも、使う人の豊かな創造力を支えるミシンを作り続けたいと思います。
株式会社鈴木製作所 開発部部長 佐久間 徹
道具として手になじみ、使えば使うほど愛着が湧くミシンを
わたしたちのミシンは、ただの道具ではなく、一緒に作品を作る相棒として使ってもらえるとありがたいですね。作品をつくるという、みなさんの「生きがい」を支える存在になるために次はどうしよう、といつも考えています。作り手の感性が刺激されるようなミシンを作れば、きっとベビーロックミシンのファンになってもらえるでしょう。道具として手になじみ、使うほどに愛着の湧く便利なミシンをお届けして、ミシンを使う方々には、モノを作る真髄に時間を使ってもらいたい。
ベビーロックを使って心からよかったと満足する。ミシンを通してそんな楽しい時間を過ごしてもらえたらうれしいですね。
株式会社鈴木製作所 代表取締役社長 鈴木重幸